貴方に夢中。こんなにも。

まるで触れたところから気持ちが伝わってくるみたい!





そらとこいとゆめのあお







ねえ昨日夢の中であなたに会ったよ、そう笑って目の前の恋人はいつものように優しくキスをした。
夢にまで出てくるなんて、そんなにオレのこと好きなの?そんなことを囁きながら。
どうしてこの人はいつもこんな意地悪を言うのだろう、俺がどれだけあんたの事を好きかなんて今更聞かなくたって、分かっているだろうに。近づいた拍子にふわりと鼻先をかすめたのはお揃いのシャンプーの香り。我儘な恋人がいつもと同じでないと嫌だと言ってうちの風呂場に放り込んでいったシャンプーは、何気なく使ってみたら存外に仕上がりが心地良かったのでそれから俺も使うようになって、あれからもう3本目になる。
一緒のベッドで寝るときにはいつも、手が寂しいのか俺の髪を指先に絡めて玩ぶこの人の癖、髪が荒れていると少し攣れて痛かったのが、近頃ではそんな事もなく、節のある指の間を滑らかにさらさらと滑ってゆく。気持ち良いね、そう笑うこの人の顔を見ていたら、きっとあれは俺の為のシャンプーだったのだとなんとなくそう思えて、くすぐったい気持ちになった。
二人の体温で温められた布団の中はふんわりと良い心地で、まだ夢の中にいるみたいだった。半ば抱き枕のように抱え込まれたままでもう一度キスをされる、先程は触れるだけだったのに今度はようよう目が覚めてきたのか、熱い舌が唇の間をなぞる感触に別段抵抗もせず口を開けたらぬるりと入り込んできた舌が、口の中を容赦なく舐めまわしてきた。まだ覚醒したての意識ではついてゆくのも容易ではなくて、息をするのも覚束なくなって唇の端からどちらのかも分からない唾液が流れて落ちる、少し皺の寄ったシーツにぽたりと小さな染みをつくった。
ねえ本当はあんたの方が俺のこと好きでしょう夢に見てしまうほどに、さっきまではそう聞いてやりたかったけれど、こんなキスをされたらもう聞かなくなってよく分かってしまった。この人はこれだけ俺のことが好きなんだと、口には出来ないかもしれないけれど、こんなにも分かりやすい人もそうはいないだろう、硬くなった下半身を押し付けられて、あまりに正直だなと可笑しくなって俺は力強く恋人の頭を抱きしめた。
ねえイルカせんせ今日は仕事?そう聞かれたので、試験休みですよと答えたら本当に嬉しそうな顔をして俺を抱き締める腕に一層力がこもる、骨が軋んだ気がして、この馬鹿力、と怒ってみようかと思ったけれど結局俺もこの人が好きでたまらないのだ、伸ばした腕は恋人の頭を叩くためではなく上掛けを頭の上まですっぽりと引き上げるのに使ってそれから俺は、好きですよカカシさん、そう囁きながら真っ青な上掛けの中、恋人の顔を引き寄せて優しくキスをしたのだった。







2007.09.23