満たされていたい

あなたとセックスしていたい。





天麩羅とピザのはなし







あなたに会って知った事は、精液の味とか成人男性の身体の重みとかペニスを挿入される時の不快感とかそれから快感とか、人肌の温もりとか人を好きになる痛みとか。
そんな諸々を知ったけれど、あなたの事は何一つ知らないままだ。
好きな音楽や休日の過ごし方(これは最近俺とのセックスに費やされているから知っている方に入るのだろうか)や、好きなスポーツやテレビ番組それから今何を考えているのか、なんて事を俺は何一つ分かってはいやしない。
そうだ最近知ったのは、あなたが天麩羅を嫌いだっていう事。天麩羅は美味しいのに。あなたはどうしても食べないと言い張った、折角夕方から下拵えをして熱い油の前でせっせと揚げて、出来立てをあなたに食べてもらおうと俺はものすごく張り切っていたのに。
ぴったり予想したとおり、揚げあがる寸前に帰ってきたあなたが部屋に充満する油の匂いを嗅いで一言、「せんせーオレ天麩羅嫌いなんですけど」なんて言うものだから俺はどうしたらいいのやら、うろたえて油まみれの菜箸を持ったままあなたの前にすっ飛んで行って、「えっえっどうしよう」なんて、おろおろしているうちに鍋の温度はぐんぐん上がって、危うく火事になるところだった。
ちょうど揚げていた蓮根が無残にもまっ黒焦げの縮んだ姿でシンクに転がった、あーあと呟いてそれを見下ろしながら「まあでも食べないから。ちょうど良かった」そんなことを言うあなたが自分の知らない何か他の生き物になってしまった気がして、でもよくよく考えたら元々あなたは万事がこんな具合で他人の気持ちなんかには頓着しない性格なのか、いつの間にか俺もあなたの言動にはいちいち傷付かないようになってしまった。
「うーん夕飯は一楽にでも行きましょうか」そういうあなたが何の悪気も無いのは分かっている、一楽はオレの大好物だし、でもこの台所に広がった揚げるばかりの食材の数々、茄子や南瓜や獅子唐や海老や穴子や椎茸や、これらをどうしようとかそういうのは一切考えないんだよねカカシさん、なんだかすごく面倒くさくなってしまって俺はあなたの首に腕を回して埃っぽい口当てをぐいと下ろして、そのまま噛み付くようにキスをして、せっせと下半身を擦り付けながら舌を絡めて上手い具合にあなたも俺も勃起したところで「夕飯なんかより…」なんていう笑っちゃうくらいに陳腐な言葉であなたを誘って、そのままこうしてさっきまでもう三回はそれぞれ射精しただろうか。
腹は減っていたけれどあなたのペニスが上手い具合にその隙間を埋めるように、俺の尻にまだ深々と突き刺さったままで、そしてあなたも俺の精液をさっきからべろべろと啜って舐めて飲み下しているから、きっとそんなには腹は減っていないんじゃないだろうか、そう考えた瞬間、あなたの腹がぐうとなって一呼吸後に俺の腹もぐうぐうと鳴った。
「ああもうなにか食べましょうよ」そう言ってあなたがずるりと俺の中からペニスを引き抜こうとするので、あわてて尻にぐっと力を入れる。「まだ抜かないで」「でも腹減ったし」「じゃあ抜かないで何か食べればいいでしょう」「オレは天麩羅は嫌いです」
じゃあこのまま一楽にでも行けばいいよと言うとなにが可笑しいのかあなたはけらけらと笑って、笑って揺れるのがあなたのペニスを伝って俺の腸に微かに響いた。
ああまた勃起しそうだ、なんでか分からないけれど無性にあなたと繋がったままでいたかったから、もうこのまま一生繋がっていても構わない、そう言うと「いやでもそしたら授業とか困るでしょう」そう真面目に返されたので俺は「ちっとも困らない」と返すとあなたは少し笑って、「どうやって服を着るの」と俺の背中を撫でながら言った。ああでもそんな事まったく構いはしないのに。服なんて些細なことだ。
結局デリバリーでピザを取って、配達の兄ちゃんがぴんぽんと到着したときも俺が抜かれるの嫌がったから、あなたはなぜだかとても嬉しそうな顔をして分身したもう一人にピザを取りに行かせ、そのまま布団の上でもぐもぐとピザを食べた。繋がったまま全部食べた。
食べ終わってもう一度分身が後片付けをしたところで、ついでだからと分身のペニスを口で咥えてみたらどうしてだか尻に突き刺さったままの方のペニスが勢い良く硬くなったので、俺は嬉しかった。嬉しくってそのまませっせとしゃぶってせっせと突いてもらって、飲んだ精液の味はよく知ったいつものあなたの味だったのが少し不思議だった。







2007.09.23
変態だなあと思います(自分が)。変態が大好きです(カカイルが)。