ただお互いが居ればいい、と、そう思っていた。

夜に降る







凍るような夜の大気が満ち満ちている、深呼吸すると肺の中から体中を張り巡らせた血管を渡って細胞の一つ一つにまで、この夜というモノが自分の中に染み込んでいくようだ、見上げる闇の底で、真白な息を吐いた。
きんと凍る星々がまるで鳴っているかのように、ちりちりと耳を凍えさせる空気の微かな音、すっかり葉を落とした丸裸の街路樹が、枯色の樹皮を憐れに晒して、しんと行儀よく並ぶ大通り、どうやら人通りもなく、まるで世界は自分一人だけで構成されているようだ。いや、きみと二人。
アスファルトに鈍く響いて規則正しく刻む足音、少し早足で。静かに眠る夜の底。
この角を曲がった公園で、きみと会う。こんな冬の夜に二人、真夜中のデート。
小さな広場、冷たく外灯に照らされてそこだけぽっかりと明るい、きみはまるでスタァででもあるかのように、その下に立っていた。

首に、橙色のマフラーを巻いて。





2005.02.09
伊角さんサイド。