神がこの世にいるのなら。

ほらもう泣かないでって、まるで子供でもあやしているみたいにオレの頭を何度も、優しく撫でてくれた貴方の手がとても温かかったから。どうしようもないくらい安堵してオレは、ぽろぽろぽろと、いつまでも涙が止まらなかったんだ。

貴方が生きててくれて、本当に良かった。





それを奇跡と、人は言うのか

神は果たして、存在するのか







ああ本当にオレはきっと貴方が居なくなったらきっと、頭がおかしくなってしまうから。

だからそばに居てくださいと囁かれて、首まで真っ赤になったあなたにそう囁かれて、嬉しくて条件反射のようにハイと言いかけた。
言いかけて、止まった。
ああどうしようどうしたら良いのだろう。代わりにそっと肩をつかんで抱き寄せて、そっと震えるあなたの瞼や唇や頬に、キスをしたのだけれど。ねえこれで誤魔化されちゃくれませんか?なんて。聞けたらそれが一番良い。目の前の、至近距離にはうっとりと眼を閉じて、大好きなあなたがオレの言葉を待っている。ねえでも、オレ達忍だよ?だからこの傷も当然。命なんて最初から、考えていませんこれは必然。ねえ泣かないでってさっきあなたをあやした瞬間の、あの幸せな気持ちがいつまでも続けばだなんて、そんなの夢物語なんだよね。イルカ先生。あなたを好きです好きです好きです好きです。何万回繰り返せば幸せになれるのだろうか。分からないまま明日もきっとオレは任務へと出かけます。あなたはオレの帰りを待つの?帰るか分からないオレを待つの?あなたに逢えたそれだけで、オレは満足しています。未来を望まず過去を振り返って、そこに幸福を見出すのです。忍ですから。傷だらけのこの身体でも、あなたを抱き締められるのですから。


神はきっといなくって。でももしいるのだったらきっと、明日も貴方に逢えるでしょう。
明日も明後日もずっと貴方に逢う事が出来たならば、それを奇跡と、私はそう呼ぶのでしょう。







2006.04.03