いらしてくださった方、ありがとうございました。
新刊はちょっと間に合わず出せませんでしたが、既刊のみの販売にもかかわらずお立ち寄り下さった方が何人もいらっしゃって、嬉しかったです。
仕事の忙しさに胡座をかいて、更新せずにイベントに突入してしまって申し訳ありません。
面丸さんにも叱られてしまった…。そういえばJ庭の無料配布ですが、前日の夜にプリンタのインク切れに気付くというなんともサザエさんばりの失態で、作って持って行くことが出来ませんでした。
突貫で書いたものでしたので、配れなくて良かったかもしれない、と見直しながら思っています…。
手直ししてどこかで出す事がありましたら、よろしくお願い致します。
かなり直さないと…ダメそうです…。
冬コミ、スペースいただけました。
久しぶりの参加です。
2日目 30日東ミ36a「円屋」です。
よろしくお願いします。
瞬くように、の続きと、他何か出せたらいいなーと思いますが、狼少年になりそうなのでインフォメーションは原稿が終ってから、です。
友人数人に発破をかけてもらえるようお願いして、頑張りたいと思います。
せっかくスペースいただけたので…。
以下、ゆこ嬢と約束したブツです。
完成まだなのですが今夜中には無理なので、途中までです…。申し訳ない…。
眠いのです。
明日続きあげます。
ハロウィン過ぎちゃったー…。
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さてさて巷では、最近他国発祥の行事であるところの「ハロウィン」とやらが、なんだか仮装をしてお菓子をもらうという楽しいものであるということで、どうやら次第に流行り始めているらしい。
合言葉は「トリックオアトリート」と、いうらしい。
いたずらしても、許される日だということらしい。
いやはや、それはなんとも。
『ぼくのだいじなおほしさま』
ゆらゆらと揺れる、南瓜の中の小さな焔。
「ほら。準備出来たらもう帰れよー」
夕日に照らされたアカデミーの廊下は、その焔と同じくらいに赤々と染め上げられていて、イルカが窓の外に目をやれば、高い空の端には、じきに一番星も瞬きそうな気配であった。
遠くにぱたぱたと軽い足音が、響いて消えていった。
木ノ葉の里でもハロウィンをやってみよう、と言い出したのは賑やかなことが大好きな、五代目火影であった。
唐突にアカデミーの職員を集め、何を言い出すかと思ったら、目をきらきらさせて、仮装して家々を回りお菓子をもらう、その仕組みと意味を滔々と説明し始めたのであった。
その表情に皆は苦笑して、それではと生徒の家々に配るプリント作りを始めたのだった。
ほんの、2週間前のこと。
それが、元来が楽しいことの好きな里の住人達であったから、子供がいる家にだけ回ったはずのプリントは、形を変えて回覧版やら掲示板やらそれから近所の立ち話などを介して、あれよあれよと言う間に見事、里中の知ることとなったのだった。
中には、まだ日があるというのに早々と一人仮装を始めるような住人もいて、なんだか大人までが楽しそうな雰囲気であった。
また、里の菓子屋は当然のことながら、近年に無い程の大繁盛であった。
アカデミーでも、南瓜を差し入れられたり有志の婦人会に衣装の採寸を(勝手に)されたりと、なんだかんだで子供達全員が、親のいない子も含めて当日までに派手なのから簡単なのから、差はあれど仮装の準備も万端整える事が出来た。
あまり早く作りすぎても腐ってしまうから、と、ハロウィン当日の図工の時間にジャックオランタンは作られて、今はアカデミーのそこらじゅうに南瓜のおばけがごろごろと転がっている。
人気の無い教室の戸締りをしながら、イルカは一つ一つランタンを拾い上げては中の小さな焔に息を吹きかけて消していく。
本来ならば魔除けの意味を込めて家の玄関に飾るものであろうが、そこまでしなくてもいいだろうということで、子供達のハロウィン気分をさっきまで盛り上げてくれていたこのランタン、近隣の農家から差し入れられ生徒の手によって作られたおばけ南瓜達は、このまま、明日の給食で美味しく食べられる予定になっていた。
給食室へ運ぶのは明日の朝でも良いだろう、と、イルカは手に取った南瓜をそのままもう一度机の上に転がしてゆく。
こちらを見つめるなんともとぼけた表情は、子供達の性格そのままに、あるものは笑いあるものは情けないような顔をして、それぞれが個性的であどけなかった。
明日はパンプキンパイとそれからパンプキンプリン、それからマフィンも食べたいかな、などといたずらっぽく呟きながら、次第に薄墨を流したように暗くなってゆく廊下をイルカは一人足早に歩く。
というのもこれからイルカは、とりどりに奇抜な格好をして先程帰宅した子供達と同じく、ハロウィンの仮装をする予定なのだった。
本来なら子供だけの特権であるはずの、ハロウィンのメインの仮装訪問は、監督と防犯の為に教師が数人、同じく仮装して見回る事になっていたから、イルカはその為の準備をしなければならなかった。
大人の分の仮装衣装は用意されていなかったから、自分でなにか考えなければならない。
さてどうしよう、とつらつら思案しつつも結局、なにか布でも被れば良いだろう、と安易な仮装を思いついて、やはりどことなく高揚した気分でいたずらめいた笑いを浮かべつつ帰宅したイルカは、早速押入れから古いシーツを引っ張り出してみたものの、やはり大人の身長では被っても身体の半分ほども出てしまう。
さてさてどうしたものか、と、ふと思いついて印を結んで子供の姿になってみれば、なんとも丁度良い具合にすっぽりと身体が隠れて、よしよしと目にあたる部分に鋏で穴をこしらえつつ、イルカはこの姿でハロウィンの夜の木ノ葉の里を見回る事に決めたのだった。
「トリックオアトリートッ!」
元気な声が闇に包まれた路地に響く。
今日の木ノ葉の里は殊更に家々の軒先から明るい光が漏れていて、住人が在宅していればどこの家でも、子供達はお菓子をねだっても良いのだった。
ぱたぱたと、イルカの横を小さなフランケンシュタインと河童と魔女の姿が走り抜けて行く。
「早く早く」
くすくすと囁き合いながら。
それでもまだまだ入る余地のたくさんありそうな、大きな袋を大事そうに抱えながら。
微笑ましいな、とイルカはほっと肩の力を抜く。
本当のことを言えば少しばかり、今回の突発的行事がきちんと子供達の期待を裏切らないでいてくれるか、心配だったのだ。
だがそれは、どうやらイルカの杞憂であったようだ。
どこの家でも子供達は、差し出した袋にちゃんとお菓子を入れてもらって、アカデミーで教えたとおりきちんとお礼も言えているようで、そこらじゅうで楽しそうな笑い声が響いていた。
イルカはといえば、先程走って行った子供達と大差ない年恰好、10歳くらいの少年の姿で真っ白なシーツをふわりと被って、暗がりにぼんやりを浮かび上がったその格好は普段であったら大層異質なのだろうが今日この日ばかりは、完璧に周囲に溶け込んでいた。
なんとも簡易な仮装この上無い筈であったのだが、シーツを被る、たったそれだけでも「あらかわいいおばけ」などと頭を撫でられて、特にお菓子をもらうつもりでもなかったのだがいつの間にか、手には袋を握らされて幾つかのキャンディやチョコレートが、気付けばかさかさと楽しそうに音を立てていた。
なんだかそれがちっとも悪い気分がしなくて、そして大人に甘やかされるという感覚が新鮮で、そんな自分に苦笑しながらイルカは、行為を無下にするのもあれだろうと別段正体をばらすこともなく、里内をぺたぺたと歩き回っては時折「お菓子を落とした」だの「友達とはぐれた」だのでべそをかいている子供の面倒を見ていた。
どこまでも深い黒の夜空の高いところでは月が、時折雲間に隠れながらも眩しすぎるほどに明るく架かっていて、わざわざ作ったのだろう時折見かける玄関先のジャックオランタンの光も、同じように黄色く輝いて、時折吹く風にちらちらと揺れていた。
秋も深まった木ノ葉の里ではすっかり耳慣れた、枯葉の道端でかさこそと鳴る物寂しい音さえも、今日は楽しそうに聞こえてくる。