大切に大切に。 柔らかく日々を生きてゆく。 処によりああ雲が切れるね、とそう呟いたきみの横顔はとても綺麗で、だから隣にひっそりと息づく僕は、そっとまた息を吐き出したのだ。ゆるゆると。 だけどそうしてみたところで、雲間から射す光、そのたった十分の一ほども僕の存在はきみの心を揺るがしはしない。しないのだった。 だから勢いこうして、そのさらさらと風に揺れる髪や肌の温もりやほらきみの吐息や、こうして僕は確かめずにはいられない。 どうしたのくすぐったいよと、いかにも無邪気そうに笑うその仕草すら、どうしようもなく僕を落ち着かなくさせるから、僕のこれほどまで日々に懸命な様はむしろ滑稽なほど。 ねえ見てご覧、あそこに虹が出るよああほら出た。その唇の動き一つ一つに、すきだよだいすきだよと、言葉を乗せて唄っておねがい唄って。 こんなにも此処は美しく、雨上がりの空はぴかぴかに光って透き通って、どこまでもどこまでも。 半夏生の深く青い、夏の空。 処により、虹。 20040708 伊角さんサイド。 |